大学名
シンガポール国立大学

シンガポール
地域
アジア
原語または英語名
National University of Singapore
URL
学部

構成(組織・教員数・学生数)
・学部教育を担う日本研究学科と、語学教育を担当する語学教育センターに分かれている。
・日本研究学科は専任教員10名。、専門は文学、人類学、国際関係、応用言語学など。
・語学教育センターは全学の学生を対象に12の言語の教育を行っている。日本語は専任12名、非常勤15名。
日本語学習の主たる目的
・学習者主体という理念重視。教師による知識の受け渡しではなく、学習者が主体的に獲得すること。
・教育はそれを支援することである、ということを意味する。日本語教育においても、学ぶという知の働きの仕組みについて重視し、認知科学などの示唆を生かした教育を行っている。(ウォーカー氏による)
・1980年代には日本に学べという実用的な欲求に応えるカリキュラムが組まれていたが、現在では21世紀の日本のポップカルチャーへの興味という需要に応えるためのカリキュラムへと変化している。(タン氏による)
必修科目
日本語が第3言語として位置づけられているため、第1、第2言語の知識や経験を生かせるよう工夫している。
日本語は履修希望者が多く、1学期目から取れない学生もいる。1年生200名程度、3年生では30~40名になる。

(1)質問(事前にインターネットを用いて提示)からはじまる2時間の講義(英語による)(語彙・文型・社会文化など)(母語の知識を新たな知識獲得に生かす)
(2)ドリル演習を踏まえて2時間×2コマの演習(会話・文字・読解・聴解・作文)(徹底した基礎練習)(1クラス15名)
(3)モデル会話の暗記をもとに、1時間の演習(応用会話練習)
(4)日本語話者との交流活動(観察タスクによる気づきの促進) 音声、文法、意味の他、日本語学の中から選択されたトピックや、翻訳理論とその実践も行っている。また、古典講読のグループワークも実施している。
日本人教員情報
語学教育センターの専任12名全員が日本人である。レクチャラーは3年以上の常勤経験、インストラクターも含め、全員MA以上である。教員は英語力が必要。
目標とする日本語のレベル
特に決まっていないが、企業からの要望はN2以上であり、実際にもN2取得の学生が多い。
必須科目の使用テキスト
1学期週7コマ(45分)11週で、『みんなの日本語』を4学期で終了、5学期目は『中級の日本語』、6学期目は『ニューアプローチ中上級』を使用する。
卒業生の進路
日系企業、公務員、教員など。
学習上の困難点

大学院

構成

研究領域・方向性
修士論文:19本(1997年-2005年)(内13本はシンガポール等との比較研究および外から見た日本という視点による研究) 2009-2010年度のテーマ:タイで生活している日本人、東南アジアと日本の文化外交、シンガポールにおける戦争の記憶、中国における日系企業ほか。
近年の博士論文のテーマ:Comparative Study of Western Theatre and Japanese Traditional Theatre(2014), Don't Forget to Fight!:Singapore's History Education and War Comemoration,1945-2005(2013)
コースの特徴
日本研究課程(Japanese studies)における修士課程のモジュールは以下のとおりである。
Readings in Japanese Studies Ⅰ、Ⅱ、Japanese Literary & Performance Studies, Contemporary Japanese Social Issues,Leading of japanese Historical Sources, Independent Study,
Readings in Japanese History & Society, Readings in Janpanese Politics & Economics, Readings in Japanese Literature & Culture, Readings in Japanese Linguistics, Independent Study,
Graduate Reseach Seminar(各4単位)

修士論文は日本語あるいは英語による執筆が可能である。英語では30,000語以内、日本語では 100,000 語以内が要求される。博士論文もかつては英語あるいは日本語による執筆が可能であったが、英語能力が重視され、2002以降は英語による論文(80,000 語)のみが可能となっている。
学位授与

卒業後の進路

留学

位置づけ
日本研究学科、語学教育センターの他に、学部単位でも交換留学制度があり、多くの留学先を持っている。単位互換制度があり、各派遣元で授業時間などを元に認定している。
提携大学
次の大学において1年間あるいは1学期の交換プログラムが行われている。
東京外国語大学、東京大学、北海道大学、東北大学、京都大学、九州大学、国際教養大学、慶応義塾大学、立教大学、早稲田大学、立命館大学、関西学院大学。
留学に対する意識・条件・選抜
日本の大学への正規留学のためには、日本語能力検定1級が必須である。(ウォーカー氏による)
留学後の学生の状況

その他情報

調査協力者
ウォーカー・泉(シンガポール大学語学教育研究センター所長補佐日本語プラグラム主任講師)、 レンレン・タン(シンガポール大学人文社会学部日本研究学科教授)、ヘンドリック・マイヤーオーレ(人文社会学部日本研究学科学科長)
調査者
野本京子(東京外国語大学国際日本研究センターセンター長、大学院国際学総合研究院教授) 坂本惠(東京外国語大学国際日本研究センター副センター長、東京外国語大学留学生日本語教育センター教授)、
調査日
2014/02/20
資料

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その他
シンガポールには2万人以上の日本人が居住しているが、棲み分け傾向が強く、学習者が日本語母語話者と接触する機会が非常に限られている。それに加え、初級以上を教える教育機関もわずかであり、大半の学習者が初級レベルである。また、人数比の問題もある。2006年のシンガポールの日本語学習者数約12,000人のうち半数近くが所属する高等教育機関は6校しかない。つまり大学やポリテクでは一校あたり、1,000名前後の学習者を抱えていることになる。(教育省語学センター1,600人、南洋工科大学2,000人、タマセクポリテクニック2,000人 シンガポール国立大学1,400人)さらに日本への留学や日系企業への就職機会が増えているという背景のもとでどのように効果的な指導を行うかが課題である。
専攻に関するルールが変更されたことによる影響に加え、日本学専攻で卒業する経済的観点でのメリットが以前と比べて低くなったこと、さらには日本企業における気質の問題(『ガラスの天井』の存在)が、日本語を専攻する学生数の低下の要因になっているのではないか。
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